まだ見ぬ君に 61.12.08

気付きのカケラ、と健忘録

そよぎ続ける風

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野山を旅すると、遠くから葉擦れの音が近づき次第にボリュームを上げ、一瞬の間に体をすり抜ける風を感じたりします。竹林や針葉樹などで感じ方は様々ですが、それぞれ面白い。草っ原で横になれば頬や伸ばした手の甲に、さらに届かないところで違う風が流れている。それぞれが沢山の物語を聞かせては思い出させます。山岳には山岳の林や森、田畑や海でも異なる風が水面や草木、雲を動かして自分はここだと告げては去る。風と暮らすのはとても楽しい。

 走り続け、ふと立ち止まった時に汗を拭ってくれる風が最初に好きになった風かもしれない。それとも開け放った道場を吹き抜けた風だろうか。穏やかな風、強くても夕立に吹く風くらいが心地いい。樹々裂いてテントを潰そうとする。屋根瓦を飛ばし、吹雪ではホワイトアウトを起こし何も見えなくする。そんな風の経験はもう充分済ませたと思いたい。 

 風の呼び名は多いけど、穏やかなものは少ないのでしょうか。薫風や青田風は稀で、多くは災害を含めた警告や注意に分類される名前のような気がします。ビル風は聞きますが都会で吹く風にも良い名前があればいい。穏やかな生活で風は意識が外れてしまっているのだろうか。生活に密着する雨をより愛してきたのかもしれません。小糠雨に濡れるのは好きだし、紅雨や白雨にはたくさんの思い出があります。傘があるのによく雨には濡れているのは昔から知る友人達と変わらない私たちの癖でした。